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Vol.8
長くひいた木立の影を数えながら、森閑とした尾根道を行く。
福島県古殿町 竹貫・鎌倉岳669.1m
一月の山登りというと、いわゆる冬山を想像する人が多いのではなかろうか。厳しい風雪をついてラッセルを繰り返し、頂上を目指すあのイメージである。たいていの人が尻込みしてしまう理由かもしれない。
脊梁山脈ならまだしも、たとえば阿武隈山地の里山に本格的な冬山をあてはめるのは、認識不足というもの。道を失うほどの積雪はないし、たいていの風も森が防いでくれる。葉を落とした木々が凛として立つ空間を歩くとき、この時期ならではの落ち着きがある。体も楽だし、山を楽しむには最適な季節と言って過言ではない。
日だまりをもとめて福島も大部南、古殿町の竹貫・鎌倉岳を訪れた。鎌倉と名のつく山は、たいてい岩山のごつごつした山が多い。鎌は崖、倉は岩を意味する古語で、よく見られる鞍掛山なども「倉崖山」と置き換えるとわかりやすい。冬の岩山は、どんな姿で私たちを迎えてくれるのだろうか。軽い緊張感が心地よかった。
高速道を使っても、片道4時間。日帰りではこの辺りが限度の山であろう。今日はそれでも西側の安直な登山口をとらず、北側の「荷市場」からの道を撰んだ。二万五千図には、道記号の載っていない昔の登拝道である。
古殿町中心部へ向かう途中、流鏑馬神事で知られる「古殿八幡神社」に立ち寄った。この辺りが竹貫郷と呼ばれていたころ、十三ケ村総鎮守として崇敬を集めた立派な神社で、狛犬は一見の価値がある。狛犬というより狩野永徳の唐獅子図屏風をみているような豪華さと、愛嬌のある顔つきがよろしい。宮司さんの名字も竹貫を名乗っており、時間が惜しくてもここを外しては損をする。
足ごしらえをしている間に12時近くなる。ここのところ南岸低気圧がひんぱんにやって来て阿武隈山地に大量の雪を降らせたらしいが、北側で杉林に覆われているせいか少ない。急な尾根を直線的に登りつめれば西渡コースと合流、そのすぐ後に東屋が現れた。屋根の下、新春茶会としゃれてお薄を立ててみた。粗野を旨とする山千家のこと、みなさん満足されたでしょうか。
西へ雑木林の尾根をたどり、二つ目の賽の河原ピークに登ると2躯の石地蔵が安置されていた。寛政十二年と刻まれているから、ざっと二百年前のものになる。目を引いたのは「上松川女人中」という文字。江戸時代に自然流産や死産で子を失った母たちが建立し供養した例を、他でも聞いたことがある。そういえば、子供が赴く冥土の途中にあるのが賽の河原だった。眉は大きく弧を描き、切れ長の眼をしたお顔は、どこか幼い面影があった。法衣の梅花紋も珍しく、可愛いものだった。
道は頂上ピークを直接登らず、南側を巻いて続いた。西側に出て約50m、鎖場を直登して明るい山頂に飛び出した。岩山にふさわしく狭い山頂で、高い山に登ったような錯覚さえ覚えた。あいにくの冬型の気圧配置のため、安達太良方面は雪雲にかすんでいたが、阿武隈山地の蓬田岳や大滝根山を、みんなでああでもない、こうでもないと山座同定するひとときは実に楽しいものであった。
帰りは駒形神社への下降路をとった。最後が急に落ち込んでおり、高度感があるのでここは私の出番とばかり、活躍の場をもらった。
温泉に浸かった後、バスで一路仙台へ。北上するにつれ荒天となり、雪がフロントグラスのスクリーンに乱舞するのを凝視しているうち、眠くなっていた。(05年01月)
*アクセス
磐越自動車道・小野IC〜349号線〜古殿町
*参考コースタイム
荷市場登山口(1時間)西渡分岐(1時間)鎌倉岳頂上(0:40)西渡分岐(0:40)
西渡
* 2万5千図 竹貫・磐城新宿
* アドバイス
頂上から駒形神社への下りは、冬期に初心者注意。
温泉は「あゆり温泉」福島県矢吹町を利用。
* 問合せ先 古殿町役場0247-53-3111
古殿ふるどの 竹貫たかぬき 流鏑馬やぶさめ 西渡さやど 蓬田よ
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