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Vol.26
梅雨前線の活動が活発化、そして長期化。
各地に記録的な大雨をもたらしているさなかの山行・・・。
尾瀬・至仏山(2228.1m) 群馬県片品村・水上町
今年は、例年にない梅雨の当たり年(注1)。主催する山行が、都合3回も中止に追い込まれている。出がけの、あるいは前夜の激しい雨で神経質になり、つい催行中止を決め込んでしまう。テレビや新聞は役目柄ステージを高めに報道するから、本当に恐ろしくなってくる。そのくらいでちょうどいいと分かっていながらも、毎度、判断の悩ましさに自ら腹を立てている。
宇都宮ICから、中禅寺湖を経由して片品村へ入る。雨粒の密度が高く、バスのワイパーが間に合わない。戸倉の先、いよいよ鳩待峠への登りにかかったとき、「通行止め」の標識を立てている人がいる。「やっぱり?!」
ぎょっとして尋ねてみると、大雨で尾瀬ケ原の木道は冠水しており、通行規制しているとのこと。なのに「山の鼻小屋」の宿泊予定を告げると、あっさり通してくれた。今回の山は少々の雨でも大丈夫だが、むしろ怖いのは峠までの車道である。
峠でバスを降りると、雨は止んでいた。行き場を失ったような登山者や、バスを待つ人々が休憩所にたくさんいた。我々もとにかく山の鼻まで行って、明日の行動はそのときに決めよう、ということで出発する。小屋まで距離4km弱、高差200にも満たない下り道なので、森を楽しみながらゆっくり歩く。オオシラビソやダケカンバ、アスナロにまじって天然のカラマツが見事だ。30m近くの高さにまっすぐ伸びており、みごとな生長だ。女性たちは、樹間に咲く花を見つけるのに忙しい。うっそうとした森の道は、明るい湿原へ導く効果的な序奏である。
小屋近く、川上川を渡ったベンチの上で珍しい蛇を見た。最初はミミズかと思ったほどの細い蛇で、長さからどう見ても成体である。だが日本本土には、これほど小型の蛇はいない。模様から見て、シマヘビの幼体だったかもしれない。
拍子抜けする天気の中、山の鼻小屋に入った。夕食までの時間を利用して、上田代を散歩してみることにする。水はすっかり引いていて、木道はむしろ乾いてさえいた。さっきまでのプレッシャー「自然の猛威」はどこへやら、山上の湿原は多様な植物に富んだ、緑したたる世界に戻っていた。山なみが見えないのは残念だが、人のない尾瀬というのもまた、味わい深い。
牛首近くではカキツバタの群れが、夕まぐれの一面の緑のなかに浮かび上がっていた。補色の関係なのだろう、紫が鮮やかだった。このあたりが、尾瀬ケ原で最も多いところらしい。黄昏色ってこんな感じかなぁ…緊張感はとうに消え、♪今はまだ梅雨…♪誰も…♪いない尾瀬〜? 鼻歌が自然と口をついて出る。
振り返ると至仏山が頂上部をチラリと見せ、すぐ霧に隠れてしまった。格別の時間を味わって、ときおりやってくる霧に身をまかせながら、小屋へ戻った。
翌日も天候は曇りで安定、小屋の前で記念撮影をして出発した。標高1400mから至仏山頂2228mまで、約830mの登りだ。木道や自然石の段をゆっくり登る。滑りやすさで名物の蛇紋岩も続く。でも柔らかめなゴム底のローカット靴なら足首が自由で、微妙な凹凸に沿って重心をとれるため安心感がある。無雪期でも未だ重登山靴絶対の教書やスポーツショップが、罪深いものに思えてしまう。(注2)
1600mを越え、森林限界となるころ振り返ったら、ガスがさかんに動いて上田代や背中アブリ田代を見せてくれた。一夜の宿を借りた山の鼻の建物群も、屋根を光らせていた。ヨツバシオガマ、イワシモツケ、シブツアサツキ、オゼソウなどけなげに咲き広がる花々に慰められながら、頂上へ。
狭い頂上は、鳩待峠からの登山者でにぎわっていた。視界はなく、「展望は尾瀬ケ原を前景とした燧ケkドブックにあった「頂上からの展望は尾瀬ケ原を前傾とした燧がにケkドブックにあった「頂上からの展望は尾瀬ケ原を前傾とした燧がにケ岳ほか、いまさら説明の要もないだろう」とあったガイドブックのフレーズが、うらめしく思い出された。が、とにかく無事小さな山旅は完遂間近。またどうぞということだ、と思い直す。有り難いことと感謝し、岩尾根を軽快に心がけつつ鳩待峠を目指した。(06年07月中下旬・ガイド登山)
*アクセス 仙台宮城IC〜宇都宮IC〜清滝IC〜戸倉〜鳩待峠
*参考コースタイム 鳩待峠(1時間)山の鼻小屋(3時間)至仏山(2時間)鳩待峠
*2万5千図 至仏山・尾瀬ケ原
*アドバイス ここの蛇紋岩は非常に滑りやすい。硬いゴム底の靴は苦労する。ゆっ
くり行動したい。
注1この後7月24日付けの朝日新聞一面には「猛威梅雨前線 九州南部4300人非難」のタイトルが載った。
注2 ローカットシューズならなんでもいいと言う訳ではありません。
上田代(かみたしろ) 蛇紋岩(じゃもんがん)未(ひつじ)
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