深野稔生の山遊び十二カ月

SlowTrek山便り
 

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Vol.24
その気になれば、ちょっとディープに楽しめる。
栗駒山は、豊かな表情を持つ素晴らしい山!

栗駒山 スキー・クルージング 宮城県栗原市・岩手県一関市・秋田県東成瀬村

 

 単独でも訪れてみたいと思う山域は、最近あまりない。深田百名山や北アとかの有名な山には個人として興味が薄いし、近場でも行こうと思って行けない所は、少ないし…。いつ、どんな方法で、どのルートから、あるいはどこらあたりに足を踏み入れるか。動機が好奇心に左右されるから、頂上よりむしろ登り方に目がいってしまう。

 そういう意識で見ると、低山でも藪山でもまだまだ魅力が発見できそうな気がする。地形図を眺めているだけで、未体験の発想が生まれてくる。

 スキー登山も、好奇心的登り方を具体化してくれる方法だ。登ったピークを滑降するだけではなく、よく知られたコースを求めるのでもない。ささやかでも未知の世界へ水平移動すること。自分なりにルートを見つけたり、小さな辺境を描いて行くこと。スキー登山では、それが可能となる。

 連休直前の栗駒山は、イワカガミ平まで除雪されていて、車が並んでいた。びっくりするやらあっけないやら。この冬もずいぶん通ったが、こんな経験は初めて。最近は連休となると、首都圏の山並みの人出があるらしい。

 先行者に挨拶しながら、追い越して行く。わかん、つぼ足、スキーを背負う人、スノボを背負う若者、さまざまだ。夫婦と思われる二人連れが、シートを広げて休んでいた。「いやぁ、退職してからすっかり山にはまってしまいまして」と、お茶する様子がうらやましい。…里心を振り切って先へ進む(そんなものないって!)。

 シールスキーは、やっぱりエネルギー節約の道具だ。小一時間で頂上に立ってしまった。登る間にどんどん雲が上がり、光り輝く頂上ドームが雲を飛ばして現れた。厳冬期に栗駒の頂きを見る日が少なかったので、久しぶりに気持ちの高揚を感じた。

 シールを外して北側の雪田に入る。日が長いので、まず龍泉ヶ原あたりを目指してみよう。今年は雪解けが遅く、スキーのまま行けそうだ。稜線を30m下ってから北斜面へ滑り込む。150mほど中斜面を気持ちよく滑って、そこから広々とした雪原を西へと水平移動。単独行は、きままにルートがとれるところがいい。

 龍泉ヶ原の突端に入った。秣岳の右肩に、先日登ったばかりの鳥海山が、黄砂の影響か薄いピンクの山容を見せている。剣岳稜線の岩塔を目指すが、近づくにしたがって目標物を見失う。スキーを脱ぎ、突端の岩に登ってやっとそれらしきものを確認できた。このあたりの地形は複雑で、視界が悪ければ現在地を失いかねない。地形図を見ていたら、県界記号の間違いにも気がついた。岩手県の行政界が、秋田県側に250mも入り込んで記されている。複雑な地形とは言え、いい加減だなぁ。

 季節には花が咲き乱れるみずみずしい龍泉ヶ原、今はただ白い平坦地で、神秘感に乏しい。だがこの広い別天地に一人いるというだけで、なにか贅沢な気分になってくるから不思議。逆光に光る御駒ヶ岳を眺め、鳥の声に送られながら縦断、早々に引き上げる。

 頂上稜線に登り返したものの、時間はまだ早い。そこで久しぶりに、内院と呼んで親しんでいる鼻取沢を滑ってから帰ることにした。爆裂火口壁の40度近い急斜面だが、雪質は安定しているようだ。覗くと300mはあるだろう、一気に落ち込んで素晴らしい高度感がある。滑り出しは下部が見えないので、ちょっとしたダイブ感覚があり、ここでもまた静かな興奮を覚えた。200mほど下ってから東方向へ水平移動し、頂上からのダイレクト尾根を、えっちらおっちらシールスキーで登り返した。

 頂上を発ったのが3時半。たくさんの足跡で荒れた、堅い斜面を滑った。オーバースピードに気をつけながら、休まずに。イワカガミ平に着いたのがあっという間の10強、決して自慢できる足前ではないながら、スキーの威力にまたまた感心させられた。 今日は、栗駒山をディープに楽しんだ。けど、ちょっと疲れたかな。(06年05月初旬)

*アクセス 仙台宮城IC〜築館IC〜いこいの村〜栗駒山

*参考コースタイム あちこちに立ち寄っているので、参考になりません。

*2万5千図 栗駒山

*アドバイス バリエーションなので、天候や各自の判断によります。 

* 鼻撮り男:むかし水田の代掻き作業の際、まぐわを引かせた牛馬の鼻に棒をつけ、その棒を取って誘導した役割。鼻撮沢はその雪形の右側に刻まれる沢の名前で、個人的呼称。 

深山牧場…ふかやま(ルビ)

  


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