深野稔生の山遊び十二カ月

SlowTrek山便り
 

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Vol.23
冬に逆戻りしたかのような熊野岳から
飛び込むような気持ちで、丸山沢へ

中央蔵王 熊野岳丸山沢スキー登山 宮城県蔵王町・川崎町

 

 「りらく」をひもといてみたら、04年11月号に丸山沢遡行の「山便り」を書いていた。中央蔵王の火山岩礫地帯に刻まれた、滝の連続する谷である。昨年、みんなでシャワークライミングを楽しむ様子も、NHKで放映された。

 今回は、雪に埋めつくされたその谷を滑ろうというもの。とは言っても山の会ではむかし、丸山沢合宿が定番なくらい通った山域だった。パートナーもスキーにめっぽう強いO氏なので、安心感がある。

 残雪の多い今年だが、「すみかわスノーパーク」はすでに第三リフトのみの運転。しかも昨夜からの強風で、いつ動くか分からないという。浅ましい気持ちを自ら笑い飛ばすように、シールスキーを繰る。山では、リフトを利用するとキセルした気分になる。下界とは逆の感覚だから、変である。

 後見ゲレンデを登り詰め、刈田岳まで約400mの高差を風に向かって進んだ。1450mの大黒天付近で、エコーラインの道路が除雪の壁となって見えた。少し上部の除雪壁の低いところでスキーを外し、向かい側に渡る。刈田岳の東尾根にできるだけ早く乗れば、頂上へは効率がいい。

 北に臨む濁川の谷間を、吹雪がすごい勢いで吹き渡ってゆく。遮るもののない尾根上、こちらも立ち止まったら負けそうな気がして必死で登る。どうなってるんだろう? たしか本州付近は移動性高気圧に覆われ、一日を通して晴れマークのはずだったが…。

 頂上直下の避難小屋を目にしても、休む気にならない。エビの尻尾で真っ白になった刈田嶺神社の鳥居を、横目で見ながら馬の背方面へと滑り込む。風衝地の稜線にはまだ雪があり、スキーのまま行けるとなってほっとする。

 風はますます強くなり、しっかり握っているはずのストックがぐいぐい風下側に持って行かれる。風圧に抵抗しながら歩くのは、結構疲れる。二人して言葉を交わすこともなく、なにかに憑かれたように歩みを止めない。

 視界不良のなか、やっと熊野岳の避難小屋にたどり着いた。コンクリート小屋はすっかり堅い雪にくるまれており、ひょっとすると見つけにくい。南側の小さな窓に貼り付いた雪を落としてから入れば、なんとか明かりがとれるので、有り難い。

 少しお腹に入れ、暖かいものをとると、生き返った心地がした。O氏は凍傷になりかかったらしく、しきりに指をさすっている。あぶなかった、あぶなかったと言っている。私も以前、風下側の親指が気づかないうちに凍傷になりかかり、それ以来冷えが激しくなった経験がある。何かに気を取られているときが、いちばん危険だ。

 外へでたら、風はいくぶん弱くなっていた。凍った斜面を、カラカラ言わせて少し下ると、意外にもお釜が姿を現していた。Fine Weather! 南蔵王方面まであっさり見渡せ、拍子抜けした気分であった。

 さて、いよいよ谷へ向かっての滑降開始! さすがインストラクターのO氏、あっという間に雪煙の急斜面へと飛び込んで行った。はじめは凍っていたが、東面だけあってウインドスラブの新雪が快適だ。雪崩が怖いけれど、途中で止まるわけにはいかない。少し間をおいて行く。トラバースにならないよう、なるべく小さなターンを心がける。30度くらいになると、自分のターンが刺激になってドッと崩れやしないだろうか、心配になった。

 5月には滝の頭の雪が割れて、クレバスが口を開ける狭い地点にさしかかった。その先は落ち込んで見えないが、今日のところは大丈夫だろう。風に背中を押されるようにすばやく降り、中間地点の広い大斜面に飛び出した。振り仰ぐとロバの耳のピラミッドが、雪煙をスクリーンにして浮かび上がっていた。

 再び狭い喉状を抜け、最後の急斜面を一気に下れば、白雲山荘の跡地だ。高差約530m、あちこち写真を撮って楽しみながらも、小屋から50分ほどの滑降は無事終了となった。

(06年4月中旬)

*アクセス 仙台〜村田〜みやぎ蔵王スノーパーク〜刈田岳〜熊野岳〜丸山沢〜ひよ

 どり越え〜みやぎ蔵王スノーパーク

*参考コースタイム 8:30出発〜10:30刈田岳〜11:10熊野岳避難小屋11:40発 〜

 12:30白雲山荘跡〜14:30みやぎ蔵王スノーパーク

* 2万5千図 蔵王山

* アドバイス バリエーション・ルートなので、天候や各自の判断によります。

後見…あとみ(ルビ) ウインドスラブ…風に運ばれて積もった一枚雪 トラバース…横切る クレバス…急傾斜の雪面にできる割れ目 

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