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Vol.10
春を感じる日射しのもと、加美富士をタフに踏破した
薬莱山 やくらいさん553.1m 宮城県加美町
日本全国には、何々富士と呼ばれる郷土富士がいくつぐらいあるのだろうか。数え方にもよるが、三百五十に届くと聞いたことがある。宮城県内では「加美富士」の愛称を持つ薬莱山はじめ、文字富士、名取富士など七つほどを数えるようだ。
その中で本名が「富士山」の山は雄勝町や河北町、丸森町にあり、どれもきれいな本家型をしている。登山道があるとは限らないものの、富士巡りといったテーマで里山を探し歩くのも、楽しい試みかもしれない。
今年はいつもより雪が多く降った。それでも降雪直後以外なら、どんなに多くても薬莱山を登るのに困ることはない。平地からすっきりと盛り上がる独立峰で、ルートも分かりやすい。高差は語呂よく350m。山麓や頂上からの展望を訪ねるなら、冬の薬莱山が一番かと思う。
仙台から4号線を北上、大和町から左へ分かれて色麻町内の西側を行く。船形山から流れ出る保野川を越えて中羽前街道(347号)に入れば、いちはやく薬莱山の優美な姿が見えてくる。
旧小野田町仲町地区だったか、かつて道路右側にみごとな茅葺きの家があった。それがこじんまりした新建材の家に取って代わっていて、時の移り変わりを感じさせた。以前本の取材をしていたころに、船形山の信仰碑を見つけた少し先の民家も、別の新しい家になっていた記憶がある。
麓の「薬師の湯」温泉で休憩、みんな早くも土産センターでの物色に余念がない。里山登山には、こういう楽しみがあっていい。私は「ソリソリ」という揚げ餅が気に入った。
薬莱スキー場は二月いっぱいで終わっているらしく、張り合いのないゆるやかな雪原が広がるばかり。明治百年を記念して植樹されたという桜並木に沿って、登拝口まで歩く。ツボ足で歩いたので雪がぬかり、赤い鳥居が遠く感じた。
杉林からおいおい急登がはじまった。輪かんをつけてもなかなか進まない。一歩一歩しっかりと踏み込んでは、体重を移動する。腿上げ苦行の連続である。それでも、たしか七百十五段とされるあの悪評の階段は、すっかり雪の下になっていて有り難い。杉林をぬけ、明るい自然林の尾根をひたすら交代で登る。頂上から東に伸びる稜線に着いたころは、みんな汗だくだった。
南峰にたどり着いた。昔、土地の長者が奉納したという薬莱神社のお堂は、屋根まで雪に埋もれている。脊梁山脈のたわみである鍋越峠を吹き抜ける季節風が、日本海から大量の雪を運んできたのだろう。東の眼下には大崎耕土(大崎平野)が開けており、雪に覆われた田園地帯が防風林を黒々と点在させていた。西側には船形山や荒神山、翁山などが重なり合い、山名は分からなくても大展望にみんな満足のようだった。
山頂の憩いは北峰でとることにして、ちょっとした吊り尾根を行く。厚く張り出した雪庇に注意しながら進むと、まもなく到着。そこで大休止、輪かんの足を投げ出して昼食となった。
下山は、冬だからこそとれる夏道のない尾根をとることにした。急傾斜と深くぬかる雪に足をとられ、時に転倒して悲鳴をあげながらも起き上がり、みんなタフに闘う。途中、マンサクの黄色い花を見つけたときは満面の笑み。無事スキー場の北端に飛び出し、まぶしい雪原を「やくらいガーデン」のチャペル目指して下山した。(05年03月)
*アクセス 仙台宮城IC〜大和IC〜457号線〜347号線
* 参考コースタイム 積雪期なので、一概には言えません。
* 2万5千図 薬莱山
* アドバイス 積雪期なので、問い合わせなどを含めて各自の判断によります。温泉は「薬師の湯」または「やくらいウォーターパーク」を利用。
* 問合せ先 加美町小野田支所 0229-67-2111
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